原点 第1回「私にとって1番思い入れの深い歯科医院 〜大塚歯科クリニック〜」

私にとって最も思い入れの深い歯科医院です。

なぜなら最初に私が手がけた歯科医院でもあり、
そして私が初めて自分の手で壊した歯科医院でもあるからです。

18歳でこの業界にデビューして、20歳を迎えようとする時、
初めて1件の歯科医院を、全て担当することになりました。

いろいろなことがありましたが、何とか無事に工事が終わり、
引き渡しの前に最終チェックをしていました。

何気なく完成した院を見回すと、色々なところに汚れがあるのです。
今から考えると、仕方のない部分もあります。
ただ、当時の私は何も知らなかったので、
「どうしてこんなに汚れがあるんだ?」と不思議に思っていました。

そこで、車にいつも積んでいた掃除用具を取りに行き、掃除をし始めたんですね。
工事の人も引き上げていたので、1人で雑巾片手に床や壁を磨いていました。
すると突然先生が様子を見に来たのです。

デザイナー自ら掃除をしていた姿がよほど印象的だったらしく、その姿を見て
「そこまでしなくて良いですよ! 後は、スタッフにさせますので。」と。

ただ、私もやり出すと止まらない性格だったので、私は愛想笑いをしながら続けていました。
すると先生が「矢根さんこの後、何か予定はあります?終わったら飲みにいきましょ!」と。

特に予定は無かったので、掃除が終わった後、飲みに。
そして、二人で飲んでいる時に先生が仰りました。
「最初はビックリしたよ。経験も無さそうな、若造なんかに担当させやがって、
何かミスや至らない所があったら徹底的にクレームを言ってやろう!」と思っていた。と。

それは、そうですよね。
先生にとっては初めての開業。

開業資金に余裕があるわけでもありません。
そんな状態で、新人が来たら
誰でも「こいつで大丈夫か?」と疑うと思います。

内装工事の基礎知識はあったとしても、歯科のことについては殆ど素人の状態。

だからこそ、私は事細かく先生に色々なことを聞きました。
そして、先生も丁寧に教えてくれました。

この事がきっかけで、大塚先生とは飲み友達になりました。
もちろんクレームはなく、その後も色々な先生を紹介してくださいました。

大塚先生との飲みでお聞きした話は、その当時の私からすると非常に刺激的でした。
歯科業界の裏側や、新規開業のドクターの気持ち。
日々どんな事を考えて仕事をしているか?
スタッフ教育の話など、今でも精通する部分が多いように思います。

そして、先生が開業して6年が経ち、私も独立してプランニングボックスを立ち上げると、
お互い仕事も忙しくなり、忘年会くらいが唯一の飲みの機会になっていました。

今でも鮮明に覚えている独立した年の年末。
その日は、とても寒い日で冬の澄み切った夜空が印象的でした。

事務所に戻り、ポケットから携帯電話を取りだして机に置いた時、ふと気がつきました。
「不在着信」
『大塚歯科クリニック』
『留守番電話あり』

例年の大塚先生から忘年会のお誘いかな?と少しワクワクしながら
留守電のメッセージを聞くと、スタッフの方の声でした。ただ、声の様子がいつもと違っていました。

「本日、大塚歯科クリニック院長が亡くなりました。」
と震える声で、なるべく機械的に言おうと話しているのがわかりました。
そのメッセージを聞いて、言葉を失うのと同時に、
人は本当に悲しい時、涙すら出ないものだと思ったのを覚えています。

数ヶ月間の紆余曲折がありましたが、
結局は医院を現状復帰(テナント開業だったので、元の借りる前の状態に戻す)
することになったのです。

現状復帰工事に入る前日に鍵をもらいに行き、その足でコンビニのビニール袋を下げて、もう誰もいない大塚歯科クリニックに行きました。
かつての活気は無く、煌々と光る照明が、より静寂を際立たせました。

とても丁寧に使っていたのが、一目でわかるぐらい、床も壁も家具も全てきれいな状態でした。
備品にも埃一つなく、明日からでも診療が出来る状態。

まるで院長の帰りを待っているかのように見えました。
「これを潰すのか…」
「たった6年しか経ってないのに…」
そう心の中で呟きました。
持っていたコンビニのビニール袋にはビールが2缶。

1つを院長机に置き、もう一つ取り出して、
プルタブを開けて、私は唇をかみしめたまま何も言わずに缶と缶をコツンと当てました。

ヒンヤリとした床に座り、そのまま天井を見上げたまま時間を過ごし、冷たいビールを黙って飲んでいました。

どれくらい時が過ぎただろう?
何気なく目を閉じていると
どんな気持ちでこの院に患者さんが来るのか?
先生はどんなことを考えながら治療をされていたのか?
そしてスタッフはどんな動きをしていたのか?
など、次々とこの院で起こっていたであろうことが、目の前で起こっているように感じたのです。

それ以来、私は歯科医院の内装デザインをする前は、何もない現場の床に横になり構想を練るようになったのです。

こんな話は初めて言うかもしれません。
でも、何もない院の床で天井を見上げていると不思議と色々な事を思い浮かべられるのです。

当たり前ですが、今は大塚歯科クリニックを見る事は出来ません。
私にとって1番思い入れの深い歯科医院。
どれだけ古くなっても、このプランニングボックスのページにだけは、
大塚歯科クリニックを残し続けようと思っております。
当時関わった全ての人のために…

「何をするにも最初が大事。
初めの経験がベースになるから。
2番目からはベースからの積み上げになる」
と言う話を聞いたことがあります。
そういう意味で言えば、最初にこの先生とお付き合いしていなければ、今の私はなかったでしょう。

今も初心を忘れることなく続けている私だけの習慣…
私が床に横になって天井を見上げるところから、先生に合わせた院のデザインは始まっていきます。


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